【脳科学】2種類の幸福と脳科学(神経科学)

幸せって何だと思いますか。私自身、とても興味を持っている問いです。この問いは長い人生をかけて追求していきたいと考えています。今回は、Kringelbachらの文献”The Neuroscience of Happiness and Pleasure”を元にしながら、神経生物学的に幸福な状態というのを理解したいと考えています。本文献においては、その点について非常に丁寧に詳細がまとめられていますが、その一部をご紹介します。

 心理学の世界では、幸福は2種類の状態から定義されます。1つが、「ヘドニア(快楽)」です。これはイメージしやすく、いわゆる快感などを得ている状態を表します。しかし、快楽には適応があるために、追求し満たされてもまた欲しくなるいったループを繰り返し、長期的には満足できない、というように、快楽を幸福と捉えることに対する反対意見もあるようです。また、20世紀の医学では快楽を積極的にもつことよりも、不快や苦痛を取り除くことに重点が置かれていました。それに対して現代の多くの観点では、快楽は幸福の重要な構成要素と言われています。快楽については神経生物学的な理解が進んでいます。快楽のような感情反応は、1「感情状態(affective state)」という神経的な反応等で表される客観的な側面と、2「意識的な感情(conscious affective feelings)」という主観的な経験の2つからなります。1「感情状態」は神経科学の調査で扱いやすいです。快楽は決して単なる感覚や思考ではなく、専用のシステムを介して脳によって生成される付加的なものです。Frijdaは著書において、快楽は元は生命維持のための単純な報酬系であったとしつつも、人間においては高次の認知や価値観と密接に結びついた複雑な機能をもっていると述べています。

「快楽によって活性化される脳内ネットワーク」は広範囲にわたっていますが、「快楽の発生」に関する決定的な証拠は、皮質下構造にあるわずか数箇所の「ヘドニック・ホットスポット」(それぞれの大きさは、人間では1立方センチメートル程度と推定される)でしか見つかっていないようです。そして、ヘドニック・ホットスポットは解剖学的には分散していますが、相互に作用して機能的に統合された回路を形成しているようです。

快楽がポジティブなものか、あるいはネガティブなものかという評価については、前頭葉の眼窩前頭皮質(OFC)内にある「中央前方(midanterior)」かつ「中央外側(midlateral)」付近の亜領域で行われているようです。この領域の活動は、ヒトの神経画像研究において、様々な食べ物の主観的な美味しさの評価と強く相関している上、他にも性的なオルガスム、薬物、チョコレート、音楽などの快楽とも相関しているようです。

 そして、幸福のもう1種類は「エウダイモニア」です。エウダイモニアは、よく生きること、つまり自分の人生に意義を感じて満足しているという幸せに関する指標です。こちらについては、神経生物学的には未だわかっていることが少ないです。その中で、近年ではデフォルトモードネットワーク(DMN)という脳の回路が、自分らしさの認識、意識の状態を担っているという研究結果が出てきています。さらに、DMNの主要な領域(前帯状回や眼窩前頭皮質など)は、上述したヘドニックに関するネットワークと重なり合っており、オピオイド(幸せに関する神経伝達物質)受容体の密度も比較的高いです。これらのことから、極めて推測の域を出ないものではありますが、DMNが「エウダイモニックな幸福」と「ヘドニックな幸福(快楽)」を結びつける役割を果たしている可能性に検証の価値があると著者らは考えています。

 非常に困難なことだとは思うのですが、今後の神経生物学の発展により、「エウダイモニア」の由来についても、より明らかにされることが待ち遠しいです。自分のことについても考えてみます。私生活の中で、「ヘドニア」、「エウダイモニア」のそれぞれが満たされている場合はどんな時でしょうか。

ヘドニアが満たされる時

 ・お酒を飲んでいる時

 ・好きな動画を見ている時(お笑い番組、旅行系Youtube)

 ・テニスをしている時

エウダイモニアが満たされる時

 ・仕事がうまくいったとき

 ・趣味のブログを更新している(そのために勉強している)時

この両方を満たせるような人生を歩んでいく(趣味を楽しみつつ、自己実現も達成していく)ことが、幸せを最大限感じるために良い習慣なのかもしれません。人それぞれその中身は違うと思います。みなさんも、どんなときにヘドニアやエウダイモニアが満たされるか一度考えてみてはいかがでしょうか。それではまた!


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